こんにちは、きこです🌷
精神科で看護師をしながら、医療職の働き方について書いています。
「『○○さんに頼めば大丈夫』と言われて、最初は嬉しかった、、、」
「でも、いつからこの言葉が重くなったんだろう」
「できる人が損をする職場で、どう自分を守る?」
📌 この記事は、こんな方へ
・「頼られる人」になって、いつのまにか負担が膨らんでいる方
・『できる人』として扱われることに疲れてきた方
・役割の線引きをもう一度引き直したい方
📋 この記事でわかること
- 「できる人に仕事が集中する」職場構造のメカニズム
- なぜ「断れない」が生まれるのか
- 消耗しないための思考の切り替え方
- 改善を求めても変わらない職場で取れる行動策
OTとして働きはじめて数年が経ったころ、私はふと気づいてしまったことがあります。
頑張れば頑張るほど、仕事が増えていく。担当患者が増えても、給与は変わらない。「ナギさんに頼めば大丈夫だから」という言葉が何度も聞こえてきました。はじめはその言葉が嬉しかった。でも気づけば、その言葉が重くて仕方なくなっていました。
これは自分の頑張りが足りないのだろうか、と長い間思っていました。でも違った。これは職場の設計の問題だったのです。
「できる人に集中する」のはなぜか:メカニズムを知る
仕事が集中するプロセスは、だいたいこのように進みます。
- 仕事が速い人に「急ぎの処置をお願い」「この患者さんをお願い」が積み重なる
- 仕事がゆっくりな人には「急いでも仕方ない」という空気が生まれ、追加依頼が来なくなる
- できないスタッフの穴を、できるスタッフが埋める構造になる
- できない側にはフォローがなく、できる側の負担だけが増え続ける
この構造が固定化すると、「頑張らない方が得」という空気が職場に生まれます。そして、頑張っていた人は「バカらしい」と感じはじめる。それは怠惰ではありません。公平さへの正当な疑問です。
私も、そう感じた夜が何度もありました。「なんで私だけ」と思いながら残業していた日の帰り道、情けないやら悔しいやら。「自分が不満を言うなんて」と、その感情を奥に押し込んでいた時期が長く続きました。
【キコの話】「気づける人」ほど壊れていく
妻のキコは精神科看護師です。彼女が働く病棟では、看護師の離職が止まりません。
毎日、人手不足のまま仕事が始まる。行き着く間もなく動き続ける。休憩に行けない。水分も取れない。トイレにも行けない日がある。そうするとミスが増えて、始末書を書く。また翌日が来る。
その悪循環の中で、キコがある日こんなことを言っていました。
「周りに気づけるほど、仕事を放置できなくなるんだよ。」
患者の変化に気づく。同僚が追い詰められているのに気づく。処置が漏れそうなのに気づく——そのたびに動いてしまう。気づかない人は放置できる。気づいてしまう人だけが全てを抱えることになります。
「このまま続けるなら辞めたい」という気持ちが浮かぶのは、弱さではありません。正常な限界の信号です。キコの話を聞きながら、私にも重なるものがたくさんありました。
なぜ「断れない」が生まれるのか
医療現場では、仕事を断ることに強い罪悪感が生じやすいと思います。
「患者さんのことを考えると断れない」——この心理は、誠実さの表れです。でも依頼する側は、そのことを無意識に利用している場合があります。「あなただから頼む」「あなたなら大丈夫」という言葉は、責任感の強い人ほど引っかかりやすい。
正直、私にはそのすり替えがいつの間にか刷り込まれていました。「断ること = 患者さんを見捨てること」という思考が、気づかないうちに育っていたのです。それに気づいたのは、体重が7kg落ちてからのことでした。それだけ時間がかかってしまった。
消耗しないための思考の切り替え
💡 ① 「これは自分の問題ではなく、職場の構造の問題だ」と認識する
仕事ができることは、搾取されていい理由にはなりません。業務の偏りが生まれているなら、それは個人の責任ではなくマネジメントの問題です。「自分がもっと頑張れば解決する」という方向で考え続けると、消耗するだけで状況は変わらない。私はそれを7年かけて学びました。もっと早く気づければよかったと、今でも思います。
💡 ② 「断る」は選択肢として持っておく
毎回断る必要はありません。ただ、「断ることができる」という認識を持っておくことが大事です。「今は対応できません」「これ以上は持てません」と言えることが、長く働き続けるための自己防衛になる。言えなくて7年間消耗した私が言うのだから、信じてほしいと思っています。
💡 ③ 業務量の記録をつける
担当件数、残業時間、引き受けた追加業務を記録しておく。これは師長・上司への相談材料になると同時に、「自分が不当に多くを担っている」という事実を客観的に確認するためのものでもあります。感情論ではなく数字で話す方が、改善を求めるときに伝わりやすいと感じています。
改善を求めても変わらなかった場合に取れる行動
キコが業務の偏りについて師長に相談したとき、「あなたが早いから仕方ない」と返ってきたことがあります。改善策の提示もなく、仕事量を平準化しようという動きも起きなかった。
「仕方ない」という言葉は、構造の問題を個人の特性に帰着させて終わらせる言葉です。それは解決ではありません。キコはそのとき、泣きそうになりながら職場に戻ったと言っていました。
改善を求めても動かない職場では、以下の選択肢を現実的に検討する段階に来ているかもしれません。
- 部署異動の申請——同じ組織内でも、マネジメント文化が違う部署に移ることで環境が変わる場合があります
- 転職——「頑張るほど損をする」構造が組織文化として根付いている場合、個人の努力で変えることは難しいです。環境を変えることが最も効果的な解決策になりえます
「転職 = 逃げ」という考えは、手放してほしいと思っています。私自身が転職を決意したのは、体重が7kg落ちてからです。消耗し続けることは美徳ではありません。自分の力を活かせる環境に移ることは、正当な選択です。
まとめ
- 「できる人が損をする」のは個人の問題ではなく職場の構造の問題だ
- 気づける人ほど仕事を放置できず、全てを抱えて壊れていく——これが「できる人が損をする」の本質だ
- 「断れない」の背景には、医療職特有の責任感が利用されている場合がある
- 業務量を記録し、感情ではなく事実で改善を求める
- 改善されない職場では、部署異動・転職も現実的な選択肢として考える
📚 参考・引用文献
- 厚生労働省「労働基準法のあらまし」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501753.pdf)
- 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)「職場における公平性・公正性に関する調査」(https://www.jil.go.jp/)
- 厚生労働省「職場のハラスメント対策」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)
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