こんにちは、ナギです🐢
作業療法士として18年、いまは訪問のリハビリと、自費リハビリの副業をしながら、医療職の働き方について書いています。
「若手を褒めた直後、別の人から刺すような言葉が来た、、、」
「リーダーとして気を配っているつもりが、なぜか敵を作ってしまう」
「フキハラに疲れた自分を、どう守ろう」
📌 この記事は、こんな方へ
・若手指導とリーダー役を兼ねていて疲れている方
・『機嫌の悪い人』に振り回されがちな方
・フキハラに自分のエネルギーを奪われたくない方
📋 この記事でわかること
- フキハラ(不機嫌ハラスメント)の定義と職場での典型例
- 「誰かを褒めた=自分が否定された」と感じる心理の正体(認知の歪み・社会的比較理論)
- なぜ理不尽な出来事が帰宅後も頭から離れないのか(反芻思考のメカニズム)
- フキハラが続く職場でリーダーが自分を守る5つの具体的対処法
- 声かけ・承認をやめないための心構え
その日のことは、今でも鮮明に覚えています。
リーダーを10年以上続けていると、いろんな場面が積み重なって、少しずつ「こういうものか」と慣れていく部分があります。でもあのときは、正直、頭が真っ白になりました。
若手を褒めた、その2時間後に起きたこと
最近入ってきた新人スタッフが、本当によく動いてくれていました。指示しなくても気づいて動く。吸収が早い。私の経験からすると、それは簡単なことではありません。
だから声をかけました。
「急成長してるね。やる気があって頑張ってくれてありがとう。本当に助かるよ」
これは意識的にやっていることです。かつて誰かに「ちゃんと見てるよ」と言ってもらえたとき、どれだけ救われたか知っているから。ちゃんと見ている、というメッセージを伝えること——それがチームを動かすと、今も信じています。
その2時間後。ベテランスタッフに声をかけられました。
「仕事ができなくてすみませんね」
強い語気でした。少し険がありました。私はその瞬間、何も言えなくなりました。
「誰かを褒めた=自分を否定された」——この歪んだ認知はなぜ起きるのか
頭の中で整理しようとしても、うまくいきませんでした。私はその人のことを何も言っていない。けなしてもいない。比較もしていない。ただ、頑張っている新人に「ありがとう」と伝えただけです。
でもその人には、「自分を悪く言われた」と届いていた。
OTとして患者さんや職場スタッフと長く関わってきた経験から言うと、これは「認知の歪み」の典型だと思います。
💡 認知の歪みとは(作業療法士の視点から)
自分の思考パターンによって、客観的な事実を歪めて解釈してしまう状態のこと。疲労・睡眠不足・自己評価の低下・慢性的なストレスなどをきっかけに誰にでも起こりうる。特に「自分は評価されていない」という思い込みが強いと、中立的な出来事を脅威として受け取りやすくなる。
心理学に「社会的比較理論」があります。人は無意識に周囲と自分を比べて自己評価を作る。だから他者への賞賛を聞いた瞬間、「自分はそう言われていない=自分は劣っている」と変換してしまう人がいる。
こういった反応には、長く積み上がってきた「認められたい」「比べられたくない」という感情が深く絡んでいます。一度や二度の話ではなく、繰り返されているパターンだと感じました。
フキハラとは何か——「不機嫌ハラスメント」が職場に与えるダメージ
📌 フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは
不機嫌な態度・言動によって周囲に威圧感や不快感を与え、人をコントロールしようとする行為。怒鳴る・叩くといった直接的な暴力ではないが、その場の空気を重くし、周囲を萎縮・消耗させる点でハラスメントと定義される。直接的な暴言でないため「ハラスメントとして認定しにくい」点が、被害を長引かせる原因にもなる。
「仕事ができなくてすみませんね」——本人は自己卑下のつもりだったかもしれません。でも受け取る側には、返答の逃げ場がない攻撃でした。
- 「そんなことないですよ」→ 嘘っぽくなる
- 「そうですね」→ 肯定することになる
- 黙っている→ 認めたことになる
どう答えても消耗する。それが毎日続いていました。
「また今日もあの顔か」「今日は何を言われるか」——そう思いながら出勤する日々は、静かに、確実に人を削っていきます。
さらに厄介なのは、こうした理不尽な体験が帰宅後も頭から離れないことです。脳は理不尽な出来事を「未処理の脅威」として扱います。何度も思い返してしまう。これを心理学では「反芻思考(ルミネーション)」と呼びます。翌朝の出勤直前まで頭に残る。睡眠の質も落ちる。弱さではありません。理不尽な体験に対する、正常な脳の反応です。
【OT視点】フキハラは「体が先に知っている」
OTとして18年、職場の人間関係を見てきました。フキハラが続く環境にいると、受けている側は「頭で考えるより先に、体が反応する」ようになります。
私自身もそうでした。ある先輩からの関わりが積み重なって、その人からメッセージが届いたというだけで、体がぞくっとするようになっていました。内容を読む前から。頭で「怖い」と思うより先に、脊髄反射のように起きていました。
キコはそんな私を見て、「ナギ、その体の反応はおかしくない。ちゃんと危険を感じ取ってるってことだよ」と言ってくれました。その言葉が、正直すごく救いになりました。
このぞくっとする感覚は、弱さじゃありません。危険なものをちゃんと危険と認識している、体のアラームです。
フキハラが怖いのは、直接的な暴言じゃないぶん、「自分が気にしすぎなのかも」と疑いながら消耗し続けることだと思います。でも体が反応しているなら、もう十分な証拠だと私は感じています。
一つ付け加えると——フキハラをしている側も、多くの場合、自分がしていることに気づいていません。満たされていない何かを、不機嫌という形で外に出しているだけだと思います。「この人が自分を傷つけようとしている」というより「この人自身が壊れかけているのかもしれない」と少し距離を置いて見られると、消耗がいくらか減ることがありました。
フキハラに疲れたリーダーへ——自分を守る5つの対処法
ここ数年で学んだのは、こういう相手を「変えよう」とするのは、ほとんどの場合うまくいかないということです。認知の歪みは、本人が気づいて向き合おうと思わなければ変わらない。
だから意識を「相手を変えること」から「自分の側で線を引くこと」に切り替えることが、一番現実的な対処だと思っています。
💡 ① 「その人の機嫌は、その人のもの」と意識的に切り離す
不機嫌を向けられても、それは私のせいではない。相手の感情を自分の責任と結びつけないこと。それが消耗を防ぐ第一歩でした。
💡 ② 褒め方・伝え方の場所を選ぶ(一時的な戦略として)
フキハラが起きやすい職場では、全体の前ではなく1対1の場で静かに伝える方法も有効です。「褒めを控える」のではなく、「届け方を工夫する」ことで自分を守る。本来は堂々と褒めるべきであり、これはあくまで一時的な対応だと思っています。
💡 ③ 他のメンバーへの声かけを遠慮しない
フキハラを恐れて若手への承認をやめてしまうと、チーム全体が損をします。やめないことが、リーダーとして筋を通すことでもあると思っています。
💡 ④ 反芻思考を断ち切る「3行書き出し」
帰宅後に「今日何があったか」「自分はどう感じたか」を3行だけノートに書きます。書くことで脳が「処理済み」と判断し、繰り返す回数が減りました。認知行動療法でも使われる手法です。
💡 ⑤ 記録をつけ、一人で抱え込まない
日時・発言内容・状況をメモしておきます。エスカレートしたときの報告根拠になる。キコにも話すようにしていました。「自分の感覚はおかしくない」と確認できる人を持つことが、孤立を防ぎます。
それでも声かけはやめない——チームのために
最後に、一つだけ書いておきたいことがあります。頑張っている人に「見ているよ」と伝えることは、絶対にやめない。これだけは決めています。
誰かを褒めたことで、別の誰かが不機嫌になるかもしれない。でもそれを恐れて若手への声かけを控えたら、チームとして失うもののほうがはるかに大きいと思います。
褒められて伸びる人がいます。声をかけられて救われる人がいます。私自身がそうだったから、知っています。
だから明日も、ちゃんと見て、ちゃんと伝える。自分の心を守りながら。
✅ まとめ
- 誰かを褒めただけで攻撃的な反応が返ってくるのは、フキハラ・認知の歪み(社会的比較理論)のパターン
- 「返答の逃げ場がない」言い方は、受け取る側を確実に消耗させる
- 体がぞくっと反応するなら、それはフキハラを受けているサインだ——気にしすぎではない
- 理不尽な体験が帰宅後も頭から離れるのは、反芻思考(ルミネーション)という正常な脳の反応
- 相手を変えようとするより、自分の側で線を引くことが現実的な対処法
- 承認・声かけはやめない。それがチームを守り、自分のリーダーシップを保つ
▶ 関連記事:職場ストレスを「溜めない」技術|フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは?見分け方・対処法
※本記事は個人の特定を避けるため、具体的な職場・時期・人物像についてはぼかして記述しています。「不機嫌ハラスメント」には現時点で明確な法的定義はなく、本記事の内容は診断や治療を目的とするものではありません。
📚 参考・引用文献
- 厚生労働省「パワーハラスメントの定義・類型」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-definition)
- Beck, A.T. (1979). “Cognitive Therapy of Depression.” Guilford Press. (認知の歪み・認知行動療法の原典)
- Festinger, L. (1954). “A theory of social comparison processes.” Human Relations. (社会的比較理論)
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【免責事項】本記事は筆者の臨床経験と当事者視点に基づく一般的な情報提供であり、特定の診断・治療・雇用関係の法的助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関、職場の問題は労働相談窓口など専門機関にご相談ください。
🌱 さいごに
辞めたい人だけが、備えるわけじゃありません。
いまの職場をできるだけ長く続けたい人ほど、「いつ何が起きてもいい次の手」を、そっと準備しておくこと——。
それが、いちばん心が楽になる道だと、私は思っています。
この記事が、あなたの「いつか」のとなりに、ほんの小さな「次の手」を置くきっかけになれたら嬉しいです🐢

