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ラジコンを手放した夜——好きなことを自分から消していった時期

2026 5/10
メンタルリカバリー
2026年5月25日

押し入れの奥に、ラジコンの箱が入ったままになっています。

久しぶりに取り出してみたとき、タイヤのゴムがひび割れていました。そのひび割れを見て、何年分の時間が経ったのかを実感しました。

目次

走ることが、唯一の出口だった

ラジコンのドリフトを始めたのは、30代に入ってからです。友人に誘われてコースに行き、一度走ったらすっかり虜になりました。コントローラーを握っている時間だけは、仕事のことが頭から消えました。週末に友人と走りに行く時間が、私にとって仕事の疲れをリセットする唯一の場所でした。

あの頃は、本当に楽しかったのだと思います。今ならそれがわかります。

「断れない」空気が、少しずつ積み重なっていった

職場の文化が変わり始めたのは、その頃と重なります。勉強会が増えました。休日の研修も増えました。表向きは任意でしたが、「参加しない人間」というレッテルを貼られる雰囲気が確実にありました。

最初のうちは断っていました。でも断るたびに、何か見えない目線を感じるようになりました。プライベートの予定を優先することへの罪悪感が、じわじわと積み重なっていきました。

「今週末も走りに行こう」という友人からの連絡に、気づけば返事が遅くなっていました。そのうち、誘いが来なくなりました。

毎朝、職場の空気を確認するようになっていた

今振り返ると、あの時期の私は相当消耗していました。自分がいじめられていたわけではありません。でも、誰かが誰かを陥れようとしている場面を目にするだけで、胃が痛くなりました。私はHSP(Highly Sensitive Person)的な気質を持っていて、他者の痛みや職場の緊張感を、自分のことのように引き受けてしまうところがあります。

気づけば毎朝、出勤するたびに職場の空気を確認するようになっていました。今日は誰と誰の関係が悪いか。誰が誰を避けているか。それが無意識の習慣になっていたのです。

そんな状態で週末に「楽しむ」ことなど、できるはずがありませんでした。

「手放された」のではなく、「手放した」のは自分だった

当時の私は、ラジコンから離れていくことを「忙しいから仕方ない」と思っていました。職場の文化のせいだと思っていました。

でも正直に言うと、私は意識的に、プライベートを楽しまないようにしていました。職場に適応するために、好きなことを自分から消していったのです。「楽しんでいる自分」が職場の雰囲気に合わない気がして、楽しむことをやめました。

それに気づいたのは、ずいぶんあとになってからです。

もう一度、コントローラーを握った

少し時間が経って、職場の状況も変わり、私は少しずつ自分を取り戻していきました。あるとき、押し入れのラジコンを引っ張り出しました。バッテリーは死んでいました。タイヤはひび割れていました。でも、形は残っていました。

部品を注文して、少しずつ直しました。友人に連絡したら、すぐに返事が来ました。「久しぶりに走ろう」と。

好きなことを手放した時間は戻りません。でも、好きなことは消えていませんでした。それだけは確かです。

▶ あわせて読みたい:「何もしたくない」は怠けじゃない——燃え尽き症候群のサインと対処法|HSP医療職が壊れずに働き続けるための完全ガイド

【免責事項】本記事は筆者の個人的な体験に基づく記録です。特定の診断・治療・法的助言を行うものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関、職場の問題は労働相談窓口など専門機関にご相談ください。

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この記事を書いた人

なぎのアバター なぎ

🐢 ナギ(作業療法士)
作業療法士18年・整体師。7年のダブルバインド環境で体重が7kg減り、転職を決意した当事者。HSP気質。「逃げることも選択肢のひとつ」と伝え続けています。

🐰 キコ(精神科看護師)
精神科看護師。働きながら通信制看護学校を卒業し校長賞を受賞。退職相談を経て部署移動を選んだ当事者。夫ナギとともに、医療職のリアルな回復・働き方を発信中。

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