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疲れた現代人に「回復の技術」を届ける | メディカルリカバリーラボ
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箸が持てなくなった夜——OTのぼくが経験した尺骨神経麻痺と、3週間で戻るまでにやった3つのこと

2026 5/15
疲労回復・ストレッチ
2026年5月16日
手のしびれと向き合う夕食の場面

こんにちは、ナギです🐢

作業療法士として18年、いまは訪問のリハビリと、自費リハビリの副業をしながら、医療職の働き方について書いています。

「手がしびれて、箸が持てなくなった、、、」

「でも痛くないし、たぶん疲れてるだけ、、、」

「外来で似た患者さんは何人も診てきたのに、自分のことは見えなかった、、、」

📌 この記事は、こんな方へ

  • 長時間の自転車や前傾姿勢で、手のしびれを感じたことがある方
  • 「グローブを変えても治らない」と感じている方
  • 医療職として体を酷使していて、自分のリカバリーは後回しになっている方
  • 尺骨神経麻痺(ハンドルバー麻痺)の初期サインを知っておきたい方

📋 この記事でわかること

  • 箸が持てなくなった夜から3週間で戻るまでに、ぼくが実際にやったこと
  • 「ハンドルバー麻痺」と呼ばれる尺骨神経の圧迫が起きる仕組み
  • グローブやハンドル位置の調整より効いた「3つの根本対策」
  • 専門職でも自分の体のサインは見落とすという話と、その対処

去年の10月の話です。

川沿いを60kmほど走って帰ってきた夜、夕飯の席で箸を持とうとしたら、右手の薬指と小指が、思ったように動かなかったんです。

「え、なんこれ」と思って自分の指を見ましたが、見た目はいつも通り。ただ、感覚が鈍い。グーを握ろうとすると、外側の2本だけついてこない感じがするんです。

妻のキコが「なんか変な顔してる」と気づいてくれて、状況を話したら「病院行き」と即答されました。「でも痛くないんだよね」と言ったら、「だから余計怖い」と返されて——。

正直、そのときは大げさかなとも思ったんですが、あとから振り返ると、あの判断は正しかったです。

目次

1ヶ月前から、予兆はあった

振り返ると、8月ごろから薬指だけ少しぴりぴりすることがありました。

ライド後1時間もすれば消えていたし、走っている最中もそこまで気にならなかったので、「まあ疲れてるだけだろう」と放置していたんです。

それが10月、いつもの往復70kmルートに変えてから、悪化した気がします。距離が増えたというより、ハンドルにかかる重みが増えた——。下りで無意識に強く握る癖があって、それが週3回のライドで積み重なっていったのだと、後になってようやく気づきました。

作業療法士として知っていたのに、自分のことは見えなかった

作業療法士として18年働いていますが、自分の体のことになると、案外気づくのが遅いものです。

あとから「これだ」と思ったのが、「尺骨神経麻痺」の初期症状に近い状態だったということ。

📋 尺骨神経麻痺(ハンドルバー麻痺)とは

腕の内側を通って小指と薬指を支配する尺骨神経が、ハンドルのグリップ付近を長時間握り続けることで圧迫されて起こる神経障害。自転車乗りに多く、英語では「handlebar palsy(ハンドルバー麻痺)」と呼ばれます。初期は薬指と小指のしびれ・違和感、進行するとつまむ動作や箸の操作に影響が出ます。

外来でよく似た症状の方を診てきたのに、自分では気づけなかった。正直、少し情けなかったです。自分の専門領域のことほど、自分に当てはめるのが難しい——そういうものなんだな、と改めて思いました。

最初の2つは、外れでした

まず「グローブをつければ治るだろう」と思い、ゲルパッド入りのグローブを買いました。

でも、ほとんど効果がありませんでした。グローブの厚みで圧迫が少し和らいでも、根本的な姿勢が変わっていないから当然です。ハンドルに体重をかけ続けているかぎり、圧迫の場所が少しずれるだけで神経への負荷は変わらない。

次にハンドル位置を1cm上げました。前傾が減った分、腕への荷重は確かに減りました。ただ今度は腰がつらくなってしまって——。腰椎ヘルニアの既往があるので、この前後のバランスが本当に難しいんです。

どれも間違った方向ではなかったんですが、どれも根本に届いていませんでした。

📖 妻・キコから一言

看護師として現場にいると、「痛くないから大丈夫」って言う患者さんに何度も会ってきました。痛みがないしびれは、本人の自覚が遅れるぶん、進行も気づきにくいんです。ナギが「大げさかも」と言った夜、私が「だから怖い」と返したのは、看護師として一番危ないと感じるサインだったから。隣にいる人の違和感は、けっこう当たるものなんですよね🌷

3週間で症状がなくなった、本当に効いた3つの対策

変化があったのは、「上半身の体幹で支える」という意識に変えてからでした。

💡 対策① 腕でなく体幹で支える

腕でハンドルを引くのをやめて、腹筋と背筋で体幹を保ち、腕はあくまでも添える程度にする。最初の1週間はかなりしんどかったです。30kmを超えたあたりから体幹が疲れてきて、崩れそうになる。それを繰り返しているうちに、少しずつ慣れてきました。

💡 対策② 握る位置をずらす

ブラケットポジションで走るとき、手のひら全体で握るのをやめて、親指と人差し指側で支えるようにして、薬指・小指側に体重がかからないようにしました。これがかなり効きました。握る場所をずらすだけで、あれだけ続いた違和感がほぼなくなりましたから。

💡 対策③ 帰宅後の尺骨神経ストレッチ5分

ライドから帰るたびに、肘を軽く曲げて小指側を上向きにし、手首をゆっくり伸展させるだけの動作を5分。患者さんに指導するときと同じメニューを、ようやく自分でやるようになったわけです。神経の滑走を促す動きで、圧迫で硬くなった部位の回復を助けてくれます。

3週間後、夕飯の箸がほぼ気にならなくなっていました。4週目には完全に戻った感覚でした。

⚠️ 病院受診を考えたほうがいいサイン

  • しびれが2週間以上続いている
  • 指の動きに明らかな弱さがある(つまむ・握るの力が落ちている)
  • 「カギを握れない」「箸を落とす」などの日常動作に影響が出ている
  • 痛みがないのに違和感だけが続いている
  • ライドをやめてもしびれが消えない

3つ以上当てはまる場合は、整形外科か神経内科の受診をおすすめします。

あれから7ヶ月、再発はしていません

あの夜から7ヶ月ほど経ちました。症状が戻ってきたことは、今のところありません。

走り方の意識は変えたまま続けていますし、帰宅後のストレッチも週4回のライドのたびに続けています。グローブは結局、薄い素材に戻しました。パッドが厚いと握りが不自然になって、かえって変な力が入る気がして。

「道具で補う」より「使い方を変える」ほうが、根本的だなと改めて思います。

先月、外来でロードバイクに乗り始めた利用者さんから「手がしびれるんですけど」と相談を受けました。話を聞くと、同じようにハンドルに体重をかけていたんです。グローブより先に「どこで体重を支えているか」を見直す話をしたら、「そんなところを見るんですね」と少し驚いていました。

自分で経験していなかったら、たぶん気づけていなかった視点だったと思います。

医療職の体は、酷使されているからこそ「次の手」が要る

これは自転車の話ですが、医療職そのものの体にも、同じことが言える気がしています。

立ちっぱなし、移乗介助の腰、夜勤の自律神経——どれも「ちょっと違和感あるな」のサインを出してくれているのに、忙しさで上書きしてしまう。気づいたときには、もう箸が持てない夜になっている。

辞めるとか辞めないとかの前に、「いつ何が起きても大丈夫なように、体の側の次の手を準備しておく」。それくらいの構えでいいんじゃないかなと、ぼくは思っています。

🌿 まとめ:手のしびれと向き合った3週間で気づいたこと

  • 痛みのないしびれは、本人の自覚が遅れる。隣の人の違和感は意外と当たる
  • 道具(グローブ)や角度(ハンドル位置)より、体の使い方そのものを変える方が根本に届く
  • 体幹で支える・握る位置をずらす・神経ストレッチ5分、この3つで3週間で戻った
  • 専門職ほど自分の体のサインに鈍い。「自分に当てはめる」練習が要る
  • 体のサインは小さいうちに受け取るのが、いちばん早い回復への道

📖 あわせて読みたい

  • ▶ 医療職のためのリカバリー7習慣
  • ▶ 医療職の消耗パターン10選

※本記事は作業療法士としての臨床経験と、ぼく自身の体験を元にした内容です。手のしびれや指の動きに明らかな異常がある場合、また症状が2週間以上続く場合は、整形外科や神経内科への受診をおすすめします。本記事は医療行為や個別診断の代替となるものではありません。

📚 参考文献

  • Capitani D, Beer S. “Handlebar palsy” — a compression syndrome of the deep terminal (motor) branch of the ulnar nerve in biking. J Neurol. 2002;249(10):1441-5.
  • 日本整形外科学会「肘部管症候群・尺骨神経障害」診療ガイド
  • 厚生労働省eヘルスネット「神経系の構造と機能」

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🌱 さいごに

辞めたい人だけが、備えるわけじゃありません。

いまの仕事をできるだけ長く続けたい人ほど、「いつ何が起きてもいい次の手」を、そっと準備しておくこと——。

それが、いちばん心が楽になる道だと、ぼくは思っています。

この記事が、あなたの「いつか」のとなりに、ほんの小さな「次の手」を置くきっかけになれたら嬉しいです🐢

疲労回復・ストレッチ
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  • アルコール依存症の人は「だらしない」のではなく、真面目すぎた人だった
  • 条件は最高なのに、一番合わない。古い体質の職場で見つけた、静かな生存戦略。

この記事を書いた人

なぎのアバター なぎ

🐢 ナギ(作業療法士)
作業療法士18年・整体師。7年のダブルバインド環境で体重が7kg減り、転職を決意した当事者。HSP気質。「逃げることも選択肢のひとつ」と伝え続けています。

🐰 キコ(精神科看護師)
精神科看護師。働きながら通信制看護学校を卒業し校長賞を受賞。退職相談を経て部署移動を選んだ当事者。夫ナギとともに、医療職のリアルな回復・働き方を発信中。

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